日本の経済発展に大きく貢献したと言える産業、自動車。
時代の流れによって自動車業界は将来の明暗を分ける岐路に立たされています。
自動車産業の変化を示唆する言葉「CASE」
この言葉自体は、2016年のパリモーターショーで独ダイムラーのディーター・ツェッチェCEOが発表した中長期戦略の中で提唱した造語です。
CASEという言葉は「Connected:コネクティッド化」「Autonomous:自動運転化」「Shared/Service:シェア/サービス化」「Electric:電動化」の4つの頭文字をとったものです。
CASEは自動車業界が製造メインから通信サービスを利用したシェアリングへビジネスモデルをチェンジしていくことを示唆しています。
これは自動車業界に大きな衝撃をもたらします。車が売れなくなることが予想されるからです。なぜならば、現在の自動車産業の売上の大部分を車の生産・販売が占めているからです。
世界でも名が知れ渡っているトヨタを例に挙げると、2019年3月期の決算では総売上高30兆円に対し自動車事業の売上高が27兆円であった。実に9割以上を占めています。
トヨタと並んで有名な本田技研工業は2019年3月期決算では総売上16兆円に対しバイク・自動車事業の売上高が13兆円であった。8割以上占めていることになります。
CASEがもたらすビジネスモデルの変革
C(コネクテッド化)は、つながるクルマを目指し、ICT端末としての機能を車両に搭載して道路状況や、車両情報などのデータをネットワークを通じて集積、分析していきます。国内ではトヨタが2018年6月にコネクテッドサービス「T‐Connect」を本格スタートしています。今後は国内で発売するほぼ全ての乗用車にDCM(車載通信機)を搭載してコネクテッド化を加速していく見込みです。
次にA(自動化)についてです。
自動運転レベル5(完全運転自動化)の本格的な運用は2030年代に入ってから、と言われています。現在
トラック業界でも自動運転化の流れは強く、特に長距離トラックについては人材不足も解消できるため開発に力を注いでいます。
S(Shared & Services)について
日本国内ではタクシーの配車サービス事業が注目されています。
国内ロボットベンチャー企業であるZMP は2018年に、東京のタクシー事業者「日の丸交通」と共同で都心部で世界初の自動運転タクシーを用いた公道サービス実証を行いました。将来的にはスマホで予約・決裁が可能となるスマートタクシーサービスの提供を目指しています。
そのほかにも、駐車場で有名な 業界最大手の「タイムズカープラス」は、 カーシェア事業に乗り出しました。その駐車場の一部をカーシェアのスペースに充てているのです。
会員制で車を使いたいときはスマホなどで車種や利用時間を予約し、自分で駐車場に行ってICカードで開錠して乗るだけです。利用料金はガソリン代、保険料込みで15分220円からで、月額プランなどがあります。返却時も車内をきれいにして(常識ですね)、元の駐車場に戻して施錠するだけです。
個人的にはこの事業はかなり伸びてくるのではないかと思います。もともと駐車場という土地を持っていたことを見事に有効活用した例ですね。
E(電動化)
ガソリン車は部品がとても複雑で多いです。それに比べ、電気自動車は必要部品がとても少ないのです。
ガソリン車は3万以上の部品数が必要とされていますが、電気自動車はその半分以下で済んでしまします。しかもエネルギー効率は圧倒的に電気が勝ります。環境問題も後押しをして将来的にはガソリン車はなくなるでしょう。
これがどう自動車産業に影響が出るのか。
まずは部品製造業者(下請け)です。
下請け会社は3万社で従業員は135万人いると言われていますが、電気自動車製造に完全移行すれば、多くの下請け企業に影響を及ぼすでしょう。
そして次に競合相手の増加です。今までは高い技術を誇り、世界でも有名になった日本企業ですが、電気自動車製造では中国や米国に大きく後れています。
充電時間と走行距離に大きくかかわる電池の開発に注目です。
S(Shared & Services) が自動車業界に革命をもたらす
私はCASEのなかでも S(Shared & Services) に注目しています。
日本では(特に地方・田舎)一家に一台は自家用車をもっていることが当たり前だと思います。私の回りだと、大人一人に対して車一台もっていることが普通です。どこ行くにしても車がないと不便だからです。
しかし、車をシェアすることが当たり前の時代が来れば車を保有する人は激減します。
購入費(買い替える費用)・車検(メンテナンス)・駐車場代・車税など当たり前に負担していたランニングコストを負担する必要がなくなります。
これは車を移動手段とだけ認識している人からすればとてもありがたいことです。
個人的な予測をすると、巡回バスとタクシーの機能が融合したような無人自動車が流行るのではないかと思っています。
あとは、駅前やコンビニにシェアリングカーが完備してある時代もそう遠くないと思っています。
そうすれば、個人消費者が車を購入することはほぼなくなります。その時代までに自動車業界は車を製造して売る、というビジネスモデルからの脱却を図らなければ明るい未来は待っていないでしょう。
life is wonderful.